第10章 【白布】君の合図で始まる夏★
「ねぇ、待って。日焼け止め塗り直す。」
「塗っとけ塗っとけ。」
「私すぐ黒くなるんだよね。皮めっちゃ剥けるし。」
「皮むくの楽しいじゃん。背中塗ってやろうか?」
「あぁ、、うん、よろしく。」
なんとなく自然な流れで差し出される手に日焼け止めを手渡したまでは良かったけど、直ぐに賢二郎のセリフが頭の中で再生される。
(え!?ちょ、ちょちょちょちょっと、塗るって言った!!?)
「ストップ!」
「何?」
「やっぱり結構です!!」
「は?もう出しちゃったし。」
賢二郎の掌に視線を落とすと、500円玉くらいの円になって白い液体が乗っている。
「ほら、後ろ向けって。」
無理やり肩を掴まれ180度回転させられる。
次の瞬間、背中にぬるりとした感覚と賢二郎の掌の柔らかさを感じて、私はビクリと身体を震わせた。
「ひゃうっ!」
「何?」
「、、、!!!!」
背中から伝わってくる手の動き。
ビキニのラインを避けるように、くまなく背中を撫でられ、恥ずかしさのあまり顔に熱が集まる。
堪らなくなって両手で顔を塞ぐと、後ろからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「お前、ヤラシイこと考えてんだろ。」
頭の中で何度"いじわる!!"と叫んだかわからない。それでもやっぱり好きで仕方なくて、気持ちを弄ばれながらも胸がいっぱいで苦しかった。