第7章 【月島明光】眼鏡の向こう側
「ねえ、ちゃん?」
どくん、
胸がはねた。
少し遠くだった声がすごく近づいた。
離れていた声が耳元で聞こえる。
柵の手すりの上でかぶさる手。
背中に伝わる熱。
そして、耳に伝わる吐息。
後ろから包まれる感覚に
息が、止まる。
「俺だって、月島だよ?」
かああと上がる体温。
恥ずかしさでぎゅっと瞑った目で
せっかくの星空が見えない。
「ちゃんが好きなのはどっちの月島?」
右手に重ねられていた手がいつのまにか剥がれ、優しく下顎をなぞった。
ぶわり、と恥ずかしさが体を巡る。
「や…」
小さく呟いた声は吐息とともに闇に溶ける。
うまく、息が、出来ない。
あまり派手すぎない、でも可愛さを狙った黒無地のビジュー付きタンクトップにハイウエストの膝丈チュールスカートにカーディガン。
ちょこっと背伸びしたレースアップのヒールの高いサンダル。
ぴたりとくっついた背中が熱い。
「わたし…明光さん…」
「俺が…?」
「…すき」
私がそう呟けば、明光さんはさっきより腕に力を込め私を抱く。
「しってる。」
耳元で呟かれた言葉はずるくて、
それでも格好良くて、私は満点の星空に再び目を送った。