第7章 【月島明光】眼鏡の向こう側
この道を通ったのは何回目だろう。
月島家から私の家までの通り道。
帰りはいつも明光さんが送ってくれる。
受験生だから月島家に行くのも控えなきゃなぁ、なんて思っていればいつもより早いタイミングでの右折。
「あ…れ?」
「少し寄り道しない?」
ちっちゃなデートのお誘い。
こくこくと首を縦に振れば、車は坂を上っていった。
ーーーーーー
「展望台…?」
坂を上った先にあったのは、街を見下ろせる展望台。
停まった車から降り街の明かりに向かって歩き出せば、そこは宝石箱みたいにきらきら輝いていた。
「ちゃん、街も綺麗なんだけどさ。上。」
上…?
何があるだろうと顔を上げれば満天の星。
「う…っわあ!」
「今日は何の日?」
今日は、7月7日…
あ。
「七夕…」
くすり、と笑い私の隣に移動する明光さんを目で追う。
眼鏡に街の光が反射して、きらり、光った。
「さっきまで雨降ってたから、空が澄んでもっと綺麗に見えると思うよ?」
ぽんと頭に手が乗る。
その手があったかくて、優しくて
恥ずかしさが募る。
「あ!そういえば月島とメガネそっくりだね!」
ごまかしの言葉とそらす顔。
今日は県外での合宿でいなかった生意気な後輩の眼鏡をふ、と思い出し口走る。
ここから先は危ないと知らせる柵に手をかけ、ぐっと伸びるように遠くの星を見た。