第6章 【及川】煌めく星、ひとつ
キーホルダーを握りしめ、周りをよく見れば···なんて、誰もいないか。
そんなドラマみたいな演出なんて、あるワケないし。
だけど、手の中にあるキーホルダーは幼稚園の卒園式であの子にあげたものだ。
あの頃はまだ、バレーボールって物が分かってなくて。
ただ、このカラフルなボールが妙に気に入って。
他のどれよりも気に入ってて、だけど···
大好きだったあの子に、あげたんだ。
小学校に入れば、また会える。
そう思ってたけど、あの子はいなかった。
じゃあ、中学に上がれば!とか思ったけど、そこにもいなかった···
どこに住んでるのかも分からない。
あの幼稚園にどこから通ってたのかも知らない。
もしかしたら、もうずっと会えないかと思いながらも···毎年、七夕になるとあの幼稚園のお遊戯会を思い出して、懐かしんでた。
それなのに、オレが見つけられてないだけだったとか···ありえないでしょ!
だけど、オレの側にいられるのも今年が最後って···どういう意味だろう。
側にいられる···早く見つけて欲しい···
短冊に書かれた言葉を何度も頭の中で繰り返し、その言葉の意味を考える。
側にいられる···側に···
溝口くん命名の及川ガールズとかいう、ちょっとメイクも派手っぽい女の子たちの中···じゃないよね、絶対!
だってあの子はどっちかって言うと元気いっぱいってよりも、ちょっとおとなしい感じで···いや、待てよ?
女の子って大人になるにつれて大変身するからなぁ。
でも、早く見つけて欲しいってことは。
変わってない···と言うことも考えられるけど。
いつもオレの周りにいる女の子達を一人ずつ思い浮かべては、消去法で消していく。
あの子は、違う。
う~ん···きっとあの子も違う···
そうやってじっくり考えて見て、一人の女の子に行き着いた時···自分でも驚く程に、確信が持てた。
···隣のクラスの、!!
なんで今まで気が付かなかったんだよ、オレは!!
岩「おい、いつまで外にいるんだよ!」
体育館の出入口からオレを呼ぶ岩ちゃんを見て、手の中のキーホルダーを高々とかざす。
「岩ちゃん!!···オレ、ちょっと行ってくる!」
岩「行くってどこに···あぁ、分かった行ってこい。その代わり、練習に遅れたら···分かってんだろうな?」