第6章 【及川】煌めく星、ひとつ
「岩ちゃんは···何を書いたの?」
岩「さぁな、忘れた」
ガシガシと頭を掻きながら岩ちゃんが体育館へ入って行った。
岩ちゃんはあの時、確かオレの短冊の隣に···あ、あった!
風でヒラリと揺らめく短冊に目を凝らせば···
【 及川の願い事が叶えばいい 岩泉 一 】
岩ちゃん?!
誰もが自分の事を書いてるってのに、岩ちゃんの短冊には···
「しょうもねぇとか、言ってたクセに···岩ちゃん男前すぎ」
岩ちゃんと同じように頭をガシガシ掻きながら、照れを隠すために空を見上げる。
そこではオレ達の短冊が、風にひらひらと揺られていた。
七夕当日になれば、以前よりもっと女の子達がキャアキャアと騒ぐ···と思ってたのに。
今日は朝から···生憎の、雨。
1年に1度、この日だけしか会うことが出来ない恋人同士がいるっていうのに、こんな雨じゃ可哀想じゃん。
スマホを開いて時間別の天気予報を見れば、夜には雨も上がるとは書いてあるけど。
それじゃ遅いんじゃない?って話で。
チラリと時計を見れば、今日という日はあと数時間で終わってしまう。
結局、オレの織姫も···また見つからないまま1日が終わるのか。
やれやれ···と呟きながら岩ちゃんと体育館へ向かう。
入口に飾られた竹は、雨に降られながらもザワザワとその枝を揺らしている。
岩「こんな日に雨とか、お前の好きな七夕話も今日はツイてねぇな」
「そうだね···さすがのオレも、天気ばかりは変えられない···もっとオレに神的な力があれば!」
わざとらしく片手を伸ばせば、岩ちゃんが盛大なため息を吐いた。
岩「お前は変なテレビ見過ぎだ!···おい、アレ見ろよ」
岩ちゃんが指す方向を見れば、笹に結ばれた短冊に···小さなバレーボールのキーホルダーが結び付けられていた。
アレは確か···
手を伸ばして短冊ごと外して見れば。
〖 アルタイルの側にいられるのも今年が最後。早く見つけて欲しい 〗
そして、一緒に付いていたキーホルダーを見れば。
ー お い か わ と お る ー
ひらがなで書かれた···オレの名前。
絶対間違いない!
オレの探してたベガは···近くにいる!
もう一度短冊を読め返す。
何かヒントがあれば···