第6章 【及川】煌めく星、ひとつ
溝口くんも入れて短冊を飾り付けてから数日の間に、及川ガールズと呼ばれる女の子達も短冊を次々に飾ってくれて、今や竹が竹じゃない位に派手になっていた。
岩「しっかしなぁ。こんなちゃんとした七夕飾りなんて幼稚園ん時以来だな」
腕を組んで竹飾りを見上げる岩ちゃんを見て、そうだね···とその頃の自分たちを思い出す。
幼稚園の時の七夕お遊戯会の時、オレは彦星役で···岩ちゃんは彦星の飼っている牛役だったんだ。
今は···牛ってよりゴリラだけど。
岩「及川。お前なんか俺に失礼なこと考えてんだろ」
「か、考えてないよ!やだなぁ岩ちゃんがゴリラ顔だとか思ってないし!」
岩「バッチリ考えてんだろうが!!」
「痛っ!···岩ちゃんのゲンコツで、いつかオレの頭が腐ったスイカみたいに割れる···」
岩「既に腐りきってんだからそれも次期だろうな」
岩ちゃん···憐れむ顔でオレを見ないでよ。
「それよりさ!岩ちゃん覚えてる?幼稚園の時の七夕お遊戯会の劇!」
岩「幼稚園の?···あぁ、お前が彦星やったやつか。それがどうした」
「その時の織姫やった女の子のこと、覚えてる?」
織姫?と首を傾けながら考える岩ちゃんに、ほら!あのカワイイ女の子いたじゃんか!と言葉を付け足すと、岩ちゃんはやっと思い出したようで。
岩「あの唇に小さなホクロがあったヤツか。よくみんなにからかわれてたな、ゴミついてんぞ?ってよ」
そう···唇に小さなホクロがあって。
でもそれだけじゃなくて、泣きボクロもあって可愛くて!
ほかの男の子達も、本当は可愛くてちょっかい出したいクセに、ゴミついてるとか言っては泣かしてさ!
その度にオレと岩ちゃんが庇って慰めてたんだよね。
そして、その子がオレがずっと待ってる···織姫なんだ。
岩「そういや及川は、そいつにプロポーズ紛いのことしてなかったか?」
···ギクリ。
「そうだっけ?···忘れた、そんな昔のことなんてさ。ほら、オレって過去は振り返らないイケメンじゃん?···あ、岩ちゃんゲンコツ構えるのやめない?ね??あーっ!そうそう思い出したぁ!!」
岩「チッ···ま、いいけどよ。それより、お前の願い事···叶うといいな」
岩ちゃん?
岩「しょうもねぇ願い事だけどよ」
短冊を見上げながら、岩ちゃんが呟いた。