第6章 【及川】煌めく星、ひとつ
ウチの校長···そんなメルヘンなトコあったんだ?
岩「けど、竹だけ立ててもしょうがねぇべや?逆に殺風景だろ」
溝「そこら辺は心配ない。今頃は及川ガールズ達が飾り付けを用意してんだろ。朝見つけた時に頼んどいたからな」
及川ガールズって溝口くん···ネーミングセンスがダサいよ。
溝「そこでだ。大会も近いし、部員全員とまでは行かないけど、レギュラーメンバーだけでも短冊書くようにと監督が」
「「 はぁっ?! 」」
溝「なんかしらあるだろ、願い事。てなワケで及川、これ配っとけ」
パサリと手渡される色とりどりの紙を見て、岩ちゃんと苦い顔を見せ合った。
「岩ちゃんは、なんて書くの?」
岩「さぁな···考えとくわ」
「全国制覇!打倒白鳥沢!とか?」
岩「そりゃお前だろ」
「そんなダッサイのオレが書くワケないじゃん」
岩「てめぇ···一発殴らせろ」
や~だよ~!って言って走りながら、オレは···なんて書けばいいんだろうと考える。
叶うなら···七夕の願い事はひとつ。
オレの織姫に···巡り会いたい。
ただ、それだけ。
ねぇ、岩ちゃん?
オレはただ適当に女の子に囲まれて楽しんでると思ってる?
でも、それは違うんだよ···
オレは、オレだけに輝く星を探してるんだ。
遠い昔の小さな約束。
子供同士の指切り。
その頃の大人達は笑ってるだけだったし。
もしかしたら、向こうはもう···忘れてしまったかも知れないけど。
だけどさ?
もしも、その子と巡り合う事が出来たら···凄いと思わない?
なんて岩ちゃんに言ったら、ゲンコツゴリラに変身されるから···黙っとこ。
鞄からペンを取り出し、一枚の短冊に願い事を書いていく。
【 オレだけのベガを早く見つけたい 及川徹 】
これでよし。
ワァワァと騒ぐみんなに混ざって短冊をつける場所を考える。
どうせなら、誰よりも先に神様に願い事を聞いて欲しいから···
「テッペンも~らい!!」
岩「ガキかてめぇは!!」
「いいじゃん別に!一番最初にお願い事を聞い欲しいもん!」
岩「もん!じゃねぇよ!そしてそのピースやめろ、ウゼェ!」
ウザイと言われて更にキラリと眩しいスマイルをサービスしたら···無言でゲンコツされてしまった。