第6章 【及川】煌めく星、ひとつ
誰かにホンキで愛されたい···
誰かをホンキで愛したい···
でも、その誰かって···誰なんだろう。
いや、違う。
本当は、それが誰なのかなんて自分で分かってる。
分かってるけど。
オレには手が届かない輝きなんだ。
「及川さ~ん!こっち向いてぇ~ん!」
「ハイハーイ、今日もカワイイね~!」
「「 きゃー!! 」」
今日も今日とて女の子に騒がれて、なんて幸せな日なんだろう。
岩「アイツら、また来てんのか。うるさくてしょうがねぇ」
「いいじゃん女の子の声援があった方が練習頑張れるんだからさ?」
岩「殆どお前への黄色い声だろうが!」
「あれ?岩ちゃん···嫉妬?あ···岩ちゃん、ゲンコツ構えるのやめて···」
咄嗟に頭を押さえてガードするも、岩ちゃんの鉄拳はきちんとオレに届いてしまう。
岩「お前がヘラヘラしねーで練習すりゃ、誰も文句ねぇんだよ!」
「ヘラヘラって失礼だな。オレはいつでも爽やかでキラッキラのスマイルじゃん!」
岩「もう1発いっとくか?あぁン?」
「謹んで御遠慮させていただきます···」
フンッと大きく鼻を鳴らして、岩ちゃんがコートに入る。
オレも続いてコートに入るけど···オレが動くだけで上がる黄色い声に、岩ちゃんが険しい顔して振り返る。
···分かった、分かりました!
クルリと振り返り、女の子達を見上げる。
あっ、あの子パンツ見えてる!紫がチラチラとかエロエロだねぇ···じゃなくて!
「ねぇキミ達、練習中は静かにね!練習が終わったら、たくさん構ってア・ゲ・ル!」
パチンと音がしそうなウインクを投げれば、それはそれで騒ぎにはなったけど、その後は静かになったから問題なし!
これでやっと岩ちゃんに怒られなくて済む!と気合い入れて練習に励めば、爽やかなひと汗をかくことが出来た。
···のに!
溝「及川、岩泉、ちょっと手伝ってくれ!」
練習終わりに溝口くんに呼ばれて、岩ちゃんと一緒に行ってみれば···
「岩ちゃん、これって···どう見ても竹、だよね??」
岩「どう見なくても竹だな」
長い長い一本の竹を担いだ溝口くんが、どうだ凄いだろう?と言いながらオレ達に見せる。
溝「何だか良く分かんないけど、校長が体育館の前に飾れとか。ま、七夕近いからイベントっぽくしたいらしい」