第39章 【黒尾】さようなら、またイツカ。★
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所々卑猥なピンクに彩られた部屋。
俺たちは無駄に広いふかふかのベッドに身体を沈めた。
自分が下になって裸の彼女を抱きしめると、そのしなやかな後ろ姿が天井に貼られた鏡に写って見える。
「ごめんね、こんな場所で。」
「ううん。ラブホなんて初めて。」
「俺も。」
私服姿と背の高さが功を奏したのか、高校生の俺たちでも簡単に入店する事ができた。
「あの、、、私、初めてなんだけど、、、」
「大丈夫。優しくするから。」
「ん、、、」
とセックスがしたい。
オブラートに包むのも忘れてそう告げると、彼女は思いのほかあっさり頷いてくれた。
彼女と一緒にいた証。なんて言ったら女々しいかも知んないけど。全身で彼女を覚えていたくて必死だった。
「鉄朗、、、、」
不安げな瞳が揺れている。
彼女を抱いたままくるりと身体を反転させ、今度は俺が上になる。
「俺たち、こんな風にならなくてもセックスしてたかなぁ。」
「どうだろう、、、きっと、シてたと思うよ?」
「うん、、、、、好き。」
「私も、、、このまま一緒にいられたらいいのに、、、」
「いっそのこと二人で死んでみる?」
「鉄朗が死んじゃうなんてやだよ。」
「だから一緒だって。」
「、、、、でもヤダ、、」
それから俺たちは、行き場のない切なさをぶつけ合うように身体を重ねた。
きっともう二度と交わうことのない熱を。
求めあって、絡めあう。
そして最後に、
俺は彼女の最奥に今日一緒に居た証を、放った。
現実に対する精一杯の悪あがきだった。
これがもし夢なら、
ずっと眠っていたい。
鏡に映るくったりとしたの身体をぼんやりと見上げながら、俺はそう思った。