第39章 【黒尾】さようなら、またイツカ。★
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8年ぶりに会った彼は、あの頃とあまり変わりなくて、鼻先がツンとするくらい込み上げてくるものがあった。
あの日からずっと、私は自分を許せないでいた。
目の前でトラックに跳ねられ青い空を舞う彼の姿がずっと頭から離れずにいたから。
あの時私が飛ばされた帽子を追わなければ。鉄朗の声に耳を傾けて足を止めていたら。きっとこんな事にはならなかったはずだからーーー。
しかし、朝目が覚めると自分と同じくらい成長した彼が目の前にいて、私は目を疑った。
こんな事ってある?
夢だとしたら覚めないで欲しい。
そんな幸せな奇跡だった。
あの時よりずっとずっと大きくなった鉄朗に自然と抱きしめられ、8年越しの想いが動き出す。
幼いながらに、真剣に恋していた相手の腕の中にいる自分がどこか信じられないけど、ドキドキと音を立てる胸の高鳴りはまぎれもない本物だった。
目を覚まし、私たちは真夏の街へ繰り出した。
二人でどうでもいい娯楽映画を観て、ランチをした。
外の暑さから逃れるように駅前のデパートでウィンドウショッピングをしてたら、安いペアリングを見つけて二人で購入した。
カフェでお茶をして、私たちが離れ離れになる前の、懐かしい思い出話もした。
ずっとずっと、
離れないよう手を繋ぎながら。
「ねぇ、鉄朗、、、、指輪とか買って今更だけどね、私、鉄朗の事好きだったの。」
「あら、奇遇。俺もずーーっと好きだった。今もだけど。」
「だからね、一緒の世界じゃないけど鉄朗が生きていてくれてて本当に良かった。」
「こらこら、そんなしんみりした話ばっかりして、、、どうせすーぐ泣くんだからやめとけってば。」
「うん、、、そうだね。」
「よしよし。」
隣に座った鉄朗が私の肩を抱き寄せ、髪にキスをする。
「、、、なぁ、に一個お願い。」
「????」