第38章 【花巻】夏の憂鬱は夜空に託して
「いいねぇ…。じゃあ二年後の夏、またここで集まるか?」
「まっつん、それ海賊漫画のワンシーンみたいだよ?」
「むしろそんなノリだろ?」
「じゃあ…、二年後もここでみんなで集まっちゃう?」
「いいよー!私絶対行く」
「が行くなら俺も行くわ」
「しゃーなしでな…」
みんなと笑い合う時間がこの時間が堪らなく大切に思える。先の事を考えれば切なくて、目に映るこの瞬間がずっと続けばいいのにってそう願わずにはいられなかった。
それから岩泉たちは花火をやるとかで準備を始めていたんだけど、途中ふざけ合ってはかなか始まらない感じだった。花巻と私はそんな様子を見ながら彼らのやり取りを見て笑っていた。
「なぁ、?」
「ん?」
「向こうでちょっと話さねぇ?」
「どうしたの?…別にいいけど」
「せっかくだし川の方行こうなかって」
「えー。でも暗くない?」
「大丈夫だって。月も結構明るいし、星もよく見えるじゃん」
確かに花巻の言う通り。澄んだ空には星がたくさん輝いていて、こんな景色を二人で見られるだけでも嬉しい。
「じゃあちょっとだけ…」
みんなから離れて二人で川岸を歩いていく。すぐ肩が触れそうになる距離にドキドキは止まらない。遠くの街灯の光が届いてはいるけど辺りは薄暗くて聞こえてくるのは虫の鳴く声と水の流れる音だけ。
「なぁ、ちょっと足つけてみねぇ?」
「いいね。どうせサンダルだし」
膝丈のワンピースの裾を気にしながら、サンダルを脱ぐ。小石のごつごつした感じがくすぐったくて、滑らないようにとゆっくり足をつけていく。
「ひゃー、冷たい」
「やべー、きもちー」
「今年の夏は夏らしいこと全然できなくてつまんなかったんだよね」
「俺も…。ほぼ部活だったし部活以外は勉強してたし」
「今年はお祭りも雨で中止だったしね。おかげで浴衣着る機会もなくなっちゃった」
「今日着てくればよかったじゃん」
「……ほんとはさ、浴衣着ていこうかなってちょっと思ってたんだよね。でも、似合わなくて止めた…」
「せっかくのチャンスなのに」
「でも結果的に着なくてよかったし」
「岩の言ったこと気にしてんの?」
「そんなわけないじゃん」
確かに痛い一言ではあったけど…。