第38章 【花巻】夏の憂鬱は夜空に託して
「まぁまぁ。せっかく揃ったんだしとりあえず乾杯しようや」
「さすがだね、まっつん!ちょっとは見習いなよね、岩ちゃんも」
「うるせぇ、ほっとけ」
「じゃあ早速乾杯から始めよう!みんな飲み物持った?」
「及川、切り替え早すぎでしょ」
「いつもあんなんだから」
「花巻たちも大変だね」
「もう慣れた」
「ちょっとそこのマッキーとちゃん!二人でイチャイチャしないで」
「イチャイチャ…ってしてないよ!」
「別にいいだろー?貴重な女子なんだから」
「花巻も何言ってんの!?」
「ははっ、冗談」
冗談って言っても恥ずかしいじゃん。もう夜で良かったけど昼間だったら赤い顔絶対見られてた。
「それじゃ乾杯するよー!みんなお疲れ様!!」
「お疲れー!」
みんなの明るい声。乾杯の後、甘いコーラが喉を潤す。モヤモヤしてた気持ちも炭酸のしゅわしゅわで洗い流されるように過ぎていく。
時々ふざけながら戯れ合ってお腹を抱えて笑ったのなんて久々で、嬉しさというよりあったかい気持ちで満たされていくみたいだった。
「なぁーんか高校の三年間ってあっという間だったな…」
「でも卒業まで半年はあるじゃん。マッキーもう寂しくなってんの?」
「そんなんじゃないけど。でも予選と受験で半年なんてあってという間に終わるなって」
「そうだよね。夏休みだってあと少しだもん」
「新学期始まったら進路も決めねぇとな…」
「そうだね…」
「でもさ、早く大人になりたいって思わない?」
「及川が言うとなんか微妙…」
「なんでだよ。別に変な意味もないし。ただ大人なったら自由じゃん。会いたい時に会えるじゃん?」
「物理的な距離は無視かー?」
及川の問いに笑いながら花巻が答える。
「でも免許取って車買ったらどこだって行けるじゃん。俺は多分会いに行くと思う」
「それはそれでうぜぇし」
「こんな時くらい岩ちゃんも素直になりなよね」
「お前が言うからウザさが増すんだよ」
「むしろ爽やかだよッ!失礼な」
「まぁまぁ…。あ、どうせなら二年後はジュースじゃなくお酒飲んでたいよね」
「ちゃん言えてるー。大人になってもコーラじゃつまんないよね」
「んじゃ酒飲めるようになったらまたこうやって集まったらいいじゃん」