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《HQ》真夏の条件 〜夢短編集・夏〜

第38章 【花巻】夏の憂鬱は夜空に託して




暗くなりかけた空にまだ星は見えなかったけど川の方から吹き抜ける風は涼しくて川の流れる音が心地いい。買ってきたコンビニの袋には人数分のコーラとお菓子の数々。ラムネ味のグミを頬張りながら丁度いい石の上に座る。


「いいね、これぞ日本の夏…」

「そうだねー。風も涼しくなってきたし最高だね」

「俺らにはご褒美みたいなもんだな」

「そういえばさ、松川たちは夏休み中ずっと部活だったの?」

「ほぼ毎日な…。最後は合宿だったしほとんどバレー漬け」

「つーか聞いてよ。今回のマジで合宿キツかったんだって…。あのメニュー考えた鬼だれ?あ、岩か…」

「最後だったかんな。でもあんくらいやんねぇと全国なんて狙えねぇだろ?死ぬ気でやってんだ、こっちは」

「あはは。相変わらずストイックだよね、岩泉って」

「それな。岩も恋でもすればちょっとは丸くなるのに」

「今そんな余裕あるかよ」

「冗談だって。でも俺らのやり残したことってそっち系だよなー」


花巻がなんとなく発した言葉にどきっとする。岩泉も松川もさらっと流したけど、もしかして好きな人でもいるのかなって気になる…。

ちらっと花巻に視線を移すけど、そんなこと聞けるはずもなくてため息を隠すようにコーラを手に取った。


「みんなお待たせー」


その時丁度及川がいつもの調子で戻ってくる。だけど女の子二人の姿はない。


「おせぇよ、バカ」

「ごめんごめーん」

「あれ?あの子たちは?」

「なんか知らないけど二人が険悪な雰囲気になっちゃって帰っちゃった。 … 言っとくけど俺は何にもしてないからね。二人で勝手に言い合いになったんだから。ちょ、岩ちゃん何その顔!?」

「どうせおめぇが何か余計な事したんだろ」

「してないよ!どっちの子が俺と釣り合うかなぁって言ったら喧嘩になってさ」

「何でそんな火に油を注ぐような事を…」

「あの二人に絶対言っちゃダメだよね、松川…。気が強そうな二人だったし」

「でも結果的に自主的に帰ってくれたんだし俺らには良かったんじゃない?」

「いやぁ、ほんとにごめんねー。ついぽろっと言ったら来る!ってなっちゃって」

「お前はもう暫く喋んな。その歩くスピーカーみたいなの自重しろ」

「何そのスピーカーって」

「まんまだろうが」


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