第38章 【花巻】夏の憂鬱は夜空に託して
「ねぇ、そもそも私は参加してよかったの?」
「お前は男みたいなもんだろ?」
「何よ、その言い方…。全然嬉しくないんだけど」
「総体前めっちゃ刈り上げてたじゃん、お前」
「あれは女子バドの伝統なんだって…、総体前には必ず髪切るの」
「壮行会の時女子バドは迫力あったもんな。すげー似合ってたよ」
岩泉の無神経な言葉に松川が一応フォローしてくれてるけど…。短い髪が似合ってるって言われても全然嬉しくない。むしろ複雑だし。
「言っとくけどあれ刈り上げじゃないからね。そりゃあみんなで気合入れるために髪も短くしたけど。これでも今は少し伸びてきたんだから」
「それは思った。私服だと雰囲気も変わるなって」
「だって高校三年間部活に捧げちゃったから少しはお洒落したいじゃん」
「分かるわ。俺らもそうだもん」
「部活と恋愛両立させてんのって及川くらいだしな」
「あれ、させてんのか?」
「それは、まぁ微妙なところだけど」
「まぁでもさ、俺的にはのベリーショートも夏らしくていいと思うよ?」
「え?」
「は髪伸ばしたり、ちょっと化粧とかしたら絶対変わるタイプだな」
「お、攻めるねぇ、花巻…」
「うるせぇよ、まっつん」
「なにそれ、どういう意味?」
「その言葉のまんまの意味」
「褒めてくれてるの?貶してるの?」
「褒めてんの、これでも」
私と花巻の会話に松川は隣で何故か笑ってるし。やっぱり女に見られてない私が笑われているんだろうか…。
「…とりあえず、及川たちは放っておいて俺らは俺らで打ち上げしようぜ」
「そうだな。クソ川待ちとかアホらしいわ」
そう言って何事もなかったかのように花巻はコンビニの袋を持って川岸へと向かう。どういう意味だったんだろうって頭の中には?マークばかりでそのままなにも聞けずに花巻の背中を追った。