第37章 【木葉】その儚い熱に触れさせて_SS★
「木葉、、、ONE PIECE、、泣けるじゃん、、」
「お前なぁ、まだ9巻だぞそれ。この後何回泣くんだよ。」
「ONE PIECE、、、すごい!」
「だろ?」
スカートから伸びる脚に俺がドキドキしてるなんて知る由もなく、はベッドの上を勝手に占領して漫画を堪能していた。
テーブルいっぱいに広げたスナック菓子をお互い適当に摘みながら、特に会話もなく時間はあっという間に過ぎていく。
窓の外は日が沈み始め、空を紫色に染めるていた。
「もう19時じゃん。お前帰らなくていいの?」
「まだ花火してないもん。」
「んじゃやるか。」
「やる!そう言えばおばさん今日いないの?」
「今日はライブ行ってる。親父はもうちょっとしたら帰ってくるんじゃねーかなぁ。」
「若いねー!」
「ホントな。庭行くか。」
「うん!」
庭の蛇口でバケツに少し水を張り、俺たちは芝生の生えた庭でコンビニで買った手持ち花火をした。
「なんか童心に帰るなこれ。」
「木葉は花火両手に持ってはしゃいでそうだよね。」
「俺じゃなくても誰でもやりたいやつだろ、ソレ。」
「そうかなぁ、、、綺麗。」
しゃがみこんで膝を抱えながら花火を見つめる彼女は、なんだか少し切ない表情でぼんやりとそう言う。
「来年は赤葦とやれよ、花火。」
「それはどうかな、、、。木葉と花火するの楽しいよ。」
「、、、じゃあさ、俺と付き合っちゃう?」
隣にしゃがみ俯く顔を覗き込むと、は少し不思議そうな顔をしてから、ニコッと笑う。
「木葉はさ、大切だもん。このままがいいよ。」
「、、、だよなー。お前のしょーもねー惚気話聞くのは俺の役目だわ。」
「そー言うこと。あ、あと、線香花火だけだ。」
一瞬ぶあっと涙腺が緩みかけて俺は焦って立ち上がり空を見上げる。さっきまで紫色に染まっていた空はあっという間に暗闇になり、月がぼんやりと光っていた。