第36章 【宮治】ナイショ。 ★
左腕から伝わるの体温が心地よくて、離したくない。
このまま俺のもんになればええのに。
そんなしょうもない願望が頭ん中に充満していた。
一通り出店を回り、両手にたんまり食いもんが入った袋をぶら下げて、俺らは大通りを抜けすぐそばを流れる川の河川敷におりて、花火を見るのに場所取りをした。
真夏の18時半は日が沈み始める頃で、川の水面には橙の夕焼けが揺れ、空には白い月がうっすらと浮かんでいる。
河川敷の階段は既に花火の見物客で溢れていて、俺はの手を握って階段をゆっくり降り、適当に空いてる場所を見つけて腰を下ろした。
(、、、ちっこい手)
強く握れば握り返してくる。
そんなきっと意味のないリアクションでさえも、わずかに俺を期待させ胸は勝手に高鳴った。
「浴衣動きづらいんとちゃう?」
「ん、まぁ。でもこんな時くらいしか着るタイミングないし。」
「よぉ、似合っとるやん。」
薄群青の生地に大柄な白い百合の花が全体に描かれたモダンな雰囲気の浴衣に、辛子色の帯。普段の制服とは違う少し大人びた姿を頭のてっぺんから爪先まで順に見て行く。するとはその視線に耐えきれなくなったのか、紅い鼻緒からちょこんとのぞく爪先をキュッと丸めた。
「、、、、なんやの、もう、、、恥ずいから、、、!」
「だってほんまの事やし。」