第35章 【北】お祭り騒ぎがくれたモノ [R18]
__数日前
『信介ー!
天神さん行こや!
なぁ!今年こそ
花火見ていちご飴と
串に刺された
きゅうりの浅漬け食べて
焼きそばバーガー食べんねん!』
「…いちご飴だけ浮いとるな…
天神さんなぁ
花火間に合うか分からんで?
普通に仕事やさかいなー」
『それでもエエねん!
なぁ?
お願い!アカン?』
縋る様な瞳で
俺を見上げる
分かってへんな
「かまへんよ。
その代わり迎えに行けるかは
約束出けへんから
待ち合わせになるで
可愛いカッコしといでや?」
俺がお前の頼み断るわけないやろ
なんでって
そんなん決まってる
『ほんま!?信介メッチャ好きっ!』
この笑顔が見たいんや
高校の時に出会って
この笑顔にヤラれてから
この笑顔の為やったら
なんでもしてやりたくなる。
「知っとるよ」
お前の事を見てたから。
せやから
当然お前も同じ
”知ってる”と思ってた
俺がそう思ってるって事を。
祭り当日
夕方まだ明るい時間から
天神さんの辺りは
色鮮やかな浴衣の女子が
アチコチで見られる
サラリーマンに残業は付き物
少し遅れた出発も想定内
幸い俺の仕事場から数駅先
別に道なんか知らんでも
浴衣の波に乗ればええ
なんや?そんなに浴衣居って
紛らわしくないか?
アホか。
俺の(カノジョ)が
一番可愛いに決まってる…
「自分メッチャ可愛いやん!
待ちぼうけなん?
オレらと回らへん?」
『え…嫌です…
彼氏待ってるんで…』
「待たせるオトコなんか
ロクでもないって!
なぁ?行こうや?」
決まってるけど
待ち合わせは、やってもうたな
【イチバンカワイイ】
そう思うのは俺だけやないやん。
を取り囲む
派手なカッコした男どもを
迷惑そうな顔してあしらう
俺が出て行って退くか退かんかは
分からんけど
出て行かん選択肢はあらへんやろ
”その手、離して貰えるか?”
俺のセリフを代弁するかの様に
「止めとけや、兄さんら。
その子に手ぇ出したら
大変な事になんで?」
ナンパ男に声が掛かる
そう、それは
「そうそう。
”見とるよ”って
後ろからソローッと声掛けられて…」
「正論パンチでボッコボコや」
『あ、信介の…』
そう、俺の後輩の
宮侑、治、角名の三人