第34章 【岩泉】夏の熱を奪うほどに_ss★
「やっぱ花火は遠くから見るのに限るわ。」
「近くで見たって綺麗だよ。もう諦めてるから良いけど!」
「諦めは肝心だな。」
「はじめがそれを言うのはズルイよ。」
「花火と浴衣姿のを独り占め出来んのは俺の特権なんだよ。何年たってもな。」
未だに彼女に対する独占欲は薄まることを知らない。まぁ、そんな子供染みた気持ちを素直に吐き出せるようになっただけ、俺自身は成長しているように感じるが。
「、、、、、」
「何照れてるんだよ。」
「照れてないってば!」
「どうだかな。、、、浴衣、似合ってる。」
「、、、、ありがと。」
少し照れてそう呟く横顔をただ見ているだけなんて出来なくて、こちらを向かせて唇を奪う。
甘い桃の香りとふんわり漂うアルコール。
「それ、だいぶ甘いな。」
「そうかな?私は好き。」
あの頃よりキスは少し上手くなった。
「夏が終わるね。」
「また来年も来るだろ。」
「今年の夏は今年だけだもん。」
「なんかやり残した事あるんか?」
「うーん、、、冷凍の、たこ焼き。」
「お前、あれ以来ハマったよな。」
それは5年前のあの日。
幼馴染だった俺たちが付き合って初めての夏。
実家の庭での二人っきりの花火大会の時の事。