第31章 【孤爪】悪いのは君が可愛いせい。[R18]
からん、ころん。
からら、ころ。
からころ。
研磨と2人、屋台を巡った。
研磨が射的がうまいなんて初めて知った。
逆に金魚すくいはすごく苦手なのも初めて知った。
夕飯代わりに買った焼きそばとたこ焼きとじゃがバターは研磨の腕に。
私はと言うと、クリームてんこ盛り、好きな抹茶をMAXに盛り込んだクレープを頬張っていた。
「…よくそんなの食べれるね……胸焼けしそう。」
「美味しいよ?研磨も一口食べる?」
人混みに疲れて立ち寄った木陰。
はいとクレープを差し出せば、研磨の視線がきょろり、泳ぐ。
クレープ、そして、わたし。
「うん、食べる。」
す、と下顎を撫でる研磨の指。
あと思う間も無く、私の唇は研磨に奪われた。
「ん、やっぱり甘い。」
甘さに顔をしかめる研磨。
暑いからといつもは顔を隠すために伸ばした髪を結っているその姿が可愛らしくて。
でも、いつもは見えないセクシーな首筋が見えたり、つ、と滴る汗が逆に男らしくて。
私は、はぐ、と目の前のクレープにかぶりついた。
無言、無言。
私はひたすらにクレープを齧る。
味なんてわかりゃしない。
クリームの甘ったるさだけが口の中に残って変な感じ。
最後の一口を一気に口の中に放り込み咀嚼していると、小さな声で研磨が私を呼んだ。
声の方をむけば、研磨の手が伸び口端を拭う。
その指を研磨は自らの唇へと持っていき、ぺろりと舐めた。
まるで子猫がミルク皿を舐めるような、そんな仕草。
一気に血液が顔に集中したような感覚。
「研磨っ!そろそろ花火になるからっ!」
いこう、と研磨のパーカーの裾を引き、前に進もうとすれば、ぢり、と鈍い痛み。
鼻緒の擦れたところが水膨れになっていたらしい。
それが急に動いたことにより破れてしまったようだ。
痛みを我慢して歩こうとした時、また、呼ばれる名前。
「足、痛いんでしょ?家帰ろう。」
「そんなこと…」
「わからないわけない。何年一緒にいると思ってるの。」
おんぶと抱っこ、どっちがいい。
そう聞かれ、恥ずかしさで再び顔に熱が集中する。
「……自分で…」
歩く、そう言おうと口を開くけれど、研磨の視線がそれを許さない。
「できれば、おんぶで…」
拒否権、無し…みたいです。