第28章 【月島 蛍】夏の音色、風に乗って
だから僕は、関係ない。
『お願い!···じゃないと気になっちゃって···』
「気になるって、なにが?」
『練習してる時の流れ玉が当たったりしたら、風鈴が壊れちゃうから。せっかくキレイな音を響かせてるのに、壊れたりしたらかわいそうじゃない?』
風鈴がかわいそうとか、バカなの?
「別に···」
『もう!じゃいいよ、山口君か東峰先輩にお願いするから···』
山口に?
それはそれで···帰り道が面倒だ。
絶対キャッキャとしながらずっとその話を聞かされる。
そんなの、何より面倒。
「取ればいいんデショ、僕が」
『取ってくれるの??』
「自分が頼んできたクセに···これ持ってて」
スクイズボトルを押し付け、背伸びもジャンプもしないでスルッと結び目を解いていく。
僕の手に触れながらも、風鈴はチリーンと何度も音を響かせていた。
「はい、ドーゾ」
取り外した風鈴を突き出せば、大事そうに手のひらで包むキミがいた。
『ありがとう月島くん!やっぱり月島くんって優しいよね!』
「ちょっと!いちいち抱きつかないでいいから」
予想もしないお礼の洗礼を受けて、思わず戸惑う。
『ゴメン、つい···』
でも、ほんとにありがとうね!と僕の腕をポンっと叩き、ニコリと笑顔を向けるのを見て···別に、とそっぽを向いた。
なんでだよ···
なんで触れられた腕が、こんなにも熱を帯びて行くんだ···?
パタパタと音をさせながら、違う場所につけましょうよ~!と3年組の輪の中に入っていく姿を見て、触れられた場所に手を当てる。
多分···これは僕の勘違いだろ?
きっとまた···自分が嫌になる日が来るかもしれない。
なのに···なんでこんなにも、他のヤツらといるのを見るとモヤモヤするんだよ。
チッ···とまた舌打ちを鳴らしながら、どこにつける?と盛り上がる輪の中に無理やり入って、副主将の手から風鈴を取り上げる。
「僕が付けるから、いい」
『月島くん?』
「早く場所決めて。僕の休憩時間がなくなる」
素っ気ないフリをして、風鈴を摘んで揺らしてやる。
そうする度に、チリーンと切なく音を響かせる風鈴をチラリと見ながら、早くしてよね、と急かして見る。
『月島くんは、どこがいいと思う?』
小首を傾げながら僕を見上げるキミに、またそっぽを向いてやる。