第28章 【月島 蛍】夏の音色、風に乗って
「自分で決めたら?外したがってたのは、自分デショ?」
『そうだけどさ···あ、じゃあ一緒に考えようよ?』
「却下···早くして」
『えぇ~!一緒に考えてよ月島くん!』
僕のシャツを摘んで、お願い!と懇願するキミが···
「カワイコぶっても、ムリ」
『ダメ?』
「ダメ」
ちょっとだけ···僕の心に入り込んで来てるのは、秘密にしておこう。
『あ!じゃあ···あの辺とかどうかな?!あそこなら流れ玉来ないんじゃない?どうかな?』
シャツを掴んだまま僕をその場所に連れて行こうとする小さな肩に手を置いて。
「変更は聞かないからね」
そう言って風鈴を摘む指を動かし、チリーンと鳴らしてみる。
『大丈夫!だから···お願いしまーす!』
そう言ってまた笑顔を見せるキミに、ちょっとだけ擽られる気持ちを抱えながら···僕は風鈴を付けてやる。
風に揺られて、風鈴がまた···チリーンと音を響かせる。
『キレイな音だね···』
「ま、悪くはないんじゃない?」
あの日。
あの時。
あれだけ苦しくて。
あれだけ切なくて。
あれだけ悔しかった時の音とは···違う響きに耳を傾けながら。
もしかしたら···と密かに思う。
僕の新しい夏が、始まっているんじゃないか?···と。
そう思う僕の頭の上で、あの時とは違う風鈴の音が···チリーンとひとつ、響いた。
~ END ~