第27章 【菅原】Parasol fantasia
「今日の練習はここまで!ちゃんとストレッチしてから片付けな!!」
いつものようにコーチが声を上げ、みんなで輪になって体を解す。
西「スガさん!帰りにアイス食いましょう!」
元気よく西谷が誘ってくれるけど。
「あ、わりぃ。オレはちょっと···」
西「なんスか?最近スガさん、付き合い悪いッスね···」
「あはは···まぁ、また今度な、今度」
だって今日は、ピアノの音がしてたから。
ザッと片付けを終わらせ、早く出ろよ?とみんなの背中を押しながら最後に自分が体育館を出ると、外にいたみんなが一斉にオレを見た。
「えっと···なに?忘れ物か?」
澤「まさか、スガが···なぁ···」
振り返る大地の脇から見えるのは···見間違えることのない、日傘。
「あ···ここまで来て待っててくれたの?」
みんなに囲まれて姿が見えない相手に声を掛ければ、照れながらもひょこっと顔を覗かせた。
『ここまで来たら、いつもよりちょっとだけ···長く一緒にいられるんじゃないかと思って』
なんだ···?
なんなんだ、この可愛いのは!!
「まぁ···それは、そうだね」
ニヤけてしまう口元を手のひらで隠しながら言えば、ギャラリー達が冷やかしにかかってくる。
『もしかして、迷惑だったかな···孝ちゃん?』
あ、バカそれは!
「「 孝ちゃん?! 」」
叫ぶギャラリーにハッと気付いたのか、本人も顔を隠して小さくなって行く。
「いいよ、。もうバレバレだから」
「「 呼び捨て?! 」」
「あ~もう!お前らいちいちうるさいっての!!···ま、そういう事だから西谷。アイス
また今度な?」
『菅原先輩、アイスって?』
「いーのいーの!ダッシュで着替えて来るから待っててな?」
コクンと頷くのを確認して、誰より早く部室へと走る。
ちょっとでも長くいたい···さっきそう言ってくれた事が嬉しくて、部活で疲れた事も忘れて···走って、走って、走って。
これ以上ないくらいの速さで着替えて戻れば、清水に手招きされて···はい、コレ貸してあげると何かを渡される。
清「あの子と一緒に帰るんだったら、必要なんじゃない?」
目線を落とせば、オレの手に···
「制汗スプレー···?」
清「感謝してね?」
「お、おぅ、サンキュ」