第27章 【菅原】Parasol fantasia
女子らしい心遣いをありがたく受け入れる。
清水···いまオレには清水が、神様に見えるよ···
「お待たせ!」
校舎の壁に背中を預ける顔を覗けば、待つのも楽しいから···なんて言ってくれて。
『あれ?菅原先輩、何かつけてます?』
「え?あ、あぁ、うん···清水が···神様だったんだよ」
『···言ってることが、よく分かりませんけど。でも、菅原先輩らしい爽やかな香りがします』
オレらしい、とか。
そう言われると複雑な気持ちもするけど。
でも、これで遠慮なく寄り添って帰れるワケで。
「んじゃ、帰るべ!···ほら」
迷いなく手を差し出せば、そこに繋がれるオレよりずっとずっと小さな手。
『はい···孝ちゃん』
2人のときだけの呼び方に胸を弾ませながら、ギュッと手を繋ぐ。
「だな?ゆっくり、のんびり···帰るべ!」
2つに離れていた影が、細く長く伸びながらひとつに繋がる。
遠くで変な歓声が上がるのが聞こえるけど、そんなのオレは気にしない。
あの日、隣同士に並んだ距離は小さな日傘でも遠く感じたけど。
いまは、その日傘にさえすっぽり隠れてしまう位のキミを感じる···大事な距離。
それをずっとずっと大切にしたくて···
「そう言えばさ?学校に来る時は、日傘···しないんじゃなかったっけ?」
小さく畳まれた日傘を見て、ふと言ってみる。
『いいんです、今は。この日傘のお陰で、こうして並んで歩く事が出来たから···お守り、みたいで』
「ちょっとだけ、それ広げてみてよ?」
『今ですか?別にいいですけど···これでいいですか?』
夕暮れに広がる白い日傘。
そこに2人で入れば、ほら···オレ達しかいない、幸せな空間。
その幸せを胸いっぱいに感じながら。
キミを引き寄せ口付けた。
『びっ···くり、した···』
小さくあがる声に、いたずらに笑って人差し指を立てる。
びっくりさせた事にちょっとだけ拗ねて、頬を膨らませて日傘をクルクルと回すキミの隣を歩きながら···夕暮れの優しい風に吹かれて思う。
オレ達の夏は···まだ、始まったばかりだ。
~ END ~