第27章 【菅原】Parasol fantasia
山「あっ!ツッキー、このピアノってさんじゃない?」
月「ピアノが聞こえるなら、そうデショ?」
···山口と月島の会話に、オレは確信した。
今日も、来てるんだ!って。
別に特別仲良くなったわけじゃない。
だけど、ピアノの旋律が聞こえて、あの子があそこにいるんだって思うと何だか元気が出る。
いいよな、こういうのって。
相手の姿が見えなくても、そこにいるって証というか。
澤「なんだ?妙に機嫌がいいなスガは」
「そう?まぁね。大地には分からないかもだけど、コレで午後も乗り切れるっていうか」
澤「···はぁ?」
午後の練習は、いつもより張り切って練習した。
もしかしたら窓から見てるかな?とか、勝手に想像とかしちゃって。
それにもしかしたら、帰りにバッタリ···という展開になっちゃったり??という期待までして。
そんなワクワクするような事を考えながらの午後練は、あっという間に過ぎて···
「お疲れ大地!オレちょっと先に出るな!んじゃまた明後日ね!」
澤「あ、あぁ···おつかれ」
部室を出て体育館の前を通る時には、既に音楽室なんて真っ暗になってて、偶然なんてそうそう起きるわけないか···と足取りが遅くなる。
オレ···なにを期待してんだろう。
たまたま偶然、昨日···初めて会っただけじゃないか。
それに向こうはオレを知ってたけど、オレは知らなかったのに。
でも···なぜか会いたいって言う気持ちは次々と沸き起こるんだ。
偶然···かぁ。
1度目は偶然、2度目は必然、3度目は···運命。
そんな言葉を聞いたことがある。
けど今のオレには偶然だって奇跡に近かったんだから、必然なんて···有り得ない。
やっぱ大地と帰れば良かったかなぁ···なんて少し後悔しながら、夕暮れの空を見上げながら家に帰った。
明日は部活、ないんだよな。
いつもなら両手を上げて喜ぶのに、部活がないから学校へ行かないとなると···それはそれで、寂しく感じられた。