第27章 【菅原】Parasol fantasia
オレの言葉に口元を隠して笑う姿に、女の子らしいな···なんて思っちゃったりする自分もいて。
「さ、行こうか?また強い風が吹かない内に」
そう声を掛けて、肩を並べて歩き出した。
日傘がある分、並べる肩の距離は少しだけ離れてるけど···それを残念だと思う自分の気持ちが何なのか、この時はまだ···気が付いていなかった。
「ちょっと孝ちゃん、あんたどこの地球の裏側まで買い物行ってきたのよ」
彼女と別れ家に戻れば、母さんが今か今かとオレの帰りを待っていた。
「お気に入りの豆腐屋まで行ったんだよ。どうせなら美味い豆腐で食いたいじゃん?ってコトで、はいコレ」
ガサリと袋を渡せば、それもそうね!お父さんの誕生日だしね!と言って母さんの気が変わりいそいそとキッチンへと消えて行く。
靴を脱ぎながらなんとなく、可愛い子だったよな···なんて思い出して。
さん、って言ってたよな?と名前を思い出す。
歩きながらふわりと漂う香りは、きっとあの子の物だったのかとさえ思ってしまって···そこで現実に戻る。
オレ···大丈夫だったかな?!
灼熱の中を歩いてて、汗臭いとかなかったかな?!
急にそんな事が頭を過ぎり、慌ててシャワーを浴びた。
よく考えれば、今更シャワー浴びても遅いっつーの!
我ながらアホな思考の自分に乾いた笑いを漏らし、排水溝へと流れていく泡の数々を眺めていた。
澤「スガ、旭おはよう」
「おう!今日も暑いよなぁ···どうにかなんないのかね、この暑さ!」
澤「だな···でも、この暑さを乗り越えてこそ!だけどな?」
焼けるような日射しを受けながらニカッと笑う大地に、お前はつくづく太陽の下が似合う男だよと笑いながら体育館へと入る。
···そう言えば、夏休みも時間がある限りは学校でピアノ弾いてるって言ってたな?
今日も、来てるのかな?なんて、つい音楽室の方を見上げてしまう。
そこにはまだ音楽室の電気がついている気配もなく、薄暗いままだった。
なんだ、今日は···来ない日なのかな?
なんとなく肩を落とし、ワァワァと騒ぎながらやってくる後輩達を諭しながら準備をして大地の声に合わせて練習を始めた。
昼休憩に入り、涼を求めて外に出る。
居ないと分かっていても、つい見上げる校舎の窓が···開いて、る?!