第27章 【菅原】Parasol fantasia
「えっと、キミは?」
『私は、同じ烏野高校の1年の···、です』
「烏野?!しかも1年って···何組?」
『4組、ですけど』
月島と山口と同じクラスか···見たことないなぁ。
『いつも放課後に音楽室のピアノを借りて練習してて、指を休める時に···楽しそうに笑ってるバレー部の人達を見てました』
「放課後に音楽室でって···じゃあ、いつも聞こえてくるピアノは君が弾いてたのか」
『はい···多分。あ、これ···』
おずおずと差し出される袋を見て、あっ···と小さく声を出しながら受け取り、いつまでも持たせててゴメンと頭を掻いた。
『あの、私の日傘···ありがとうございました』
渡した日傘を開きながら、お礼を言うのが後になってしまって···と小さく頭を下げる。
日傘、か。
「女の子らしいよね、日傘なんて」
『そうですか?さすがに学校行く時には使いませんけど、今日はとても日射しが強くて。だけど、さっきみたいに風に煽られてしまうとなると、考えものです』
「でも、あの風がなかったら···オレ達ここでこうして話してないよ?」
『それもそうですね、あっ···』
「あぶねっ!」
ザアッと強い風が、オレ達の間を吹き抜ける。
日傘諸共に風を受けた彼女がよろめき、咄嗟に腕を伸ばして体を支えた。
「良かった、間に合って」
『度々すみません···』
乱れた髪を軽く直しながらオレを見上げるその姿に、心が跳ねた。
華奢な···体。
透き通るような白い···肌。
黒目がちな···大きな瞳。
柔らかそうな···艶めいた唇。
何もかもが、オレの心を引き付けて···鼓動を大きく揺らす。
『あの···菅原先輩?』
「あ、ご、ゴメン!」
名残惜しくもパッと体を離し、照れ臭さにオレも髪を掻きあげる。
さっきのドキドキは···なんだったんだろう。
まるでこれじゃ···あ、いや。
それはない、か。
「家はこの近くなの?」
『はい、この先を少し行ったところです』
なんだ、結構近いじゃないか。
いやいやいや···なんでオレは残念がってるんだ?
『えっと、それがなにか···?』
「いや、なんでもないよ。近くまで送る。オレもその先を行ったところが家だし。それに、また風が吹いたら飛ばされちゃうだろ?日傘も、キミもね?」