第26章 【黒尾】君のいない夏★
「平気なわけないだろ。俺がどんだけのこと好きか分かってる?」
俺の制服を掴む彼女の手に力が篭る。
「俺は離れてても、を好きでいる自信はあるけど。はどう?」
「、、、え?別れるって言わないの?」
「さん、バカですか?そんな事俺が言うとでも?」
腕を緩め、俺は彼女の顎を捕まえてキスを落とす。何度も、何度も、涙が滲んで、塩っぱいキスをたくさんした。
「別れるってゆーのは無し。わかった?」
「うん、、、ありがと。」
「素直でよろしい。」
頭を撫で、もう一回キスをすると、彼女はようやく笑ってくれた。
「今日は家まで送ってく。」
「遠いからいいよ!大丈夫。」
「ん。じゃあまた明日な。」
「ばいばい!」
足早に線路を渡り、さっきと同じようにくるっとこちらに向き直り彼女は笑って手を振る。
カンカンカンカンカン
忙しなく、再び降りる遮断機。
激しい音を立てて走り去る列車をぼんやりと眺め、俺は遅れて湧いてきた実感に心を震わせていた。
がいなくなる。
もう簡単には届かない
触れられない所に行ってしまう。
そんな現実、
俺だってそう簡単に
受け入れられるはずがない。