第26章 【黒尾】君のいない夏★
「私、転校するの。」
「、、、、、、え?」
「お父さんの転勤でさ、名古屋に引っ越すことになったんだ。だから私、音駒に通うのは春休み前まで。」
浮気だとか他に好きな奴が出来たとか、
そんなのとはわけが違う。
それは事実上の別れを意味していた。
「おぉ、、、そうきたか、、、ずいぶん急じゃないデスカ?さん。」
「、、、、うん、ごめん。」
「いつからわかってたの。」
「2月の終わりくらいから。」
彼女が俺にギリギリまで言わなかった理由。そんなのはコイツの性格を考えれば一瞬で理解ができた。いつもを好き好き好き好き喧しい俺が凹むと心配したんだろう。
「あと、3回しか会えないじゃん。」
「うん、、、、」
「部活の後用事があるっつーのは?」
「バレー部のみんなと一緒にいるの楽しくて、、クロとも、、、大好きだから、お別れするのわかってて一緒にいるの辛かったんだ。だから家で荷物の整理してた。、、、、嘘ついてごめん。」
「そっか、、、、、まあ、あれだ!名古屋なんて新幹線ですくだし。近い近い!」
「近くないよ、、、、ずっと一緒にいたんだよ?ほとんど毎日、、、すごく遠いよ、、、。」
堪らず溢れ出す涙。
身体を抱き寄せると、張り詰めていた糸が切れたように、は泣き崩れた。
「やだぁあ!!!もっと一緒に居たいのに、、、!!クロと離れたくないよぉ、、、!!!」
「よしよし、、、」
「なんで?、、クロはなんでそんなに平気そうなの!?、、、クロは寂しくないの?」
(寂しいに決まってんだろ。でも、お前がそんな泣くから、、、俺まで泣いたら誰がお前を慰めんの?)
の叫びは電車の音にかき消されるけど、一つ残らず俺の中に蓄積されて、胸の奥の方をぎゅうぎゅう締め付けた。