第26章 【黒尾】君のいない夏★
「ねぇ、最近なんでと帰らないの?」
「なんか用事あるっつってた。」
「ふーん。、、、、喧嘩したのかと思った。」
「喧嘩の方がまだマシだったかもな。」
彼女のとは、なんの約束もなくいつも一緒に帰るのが暗黙の了解みたいになっていた筈だった。
しかし、この3月になってからと言うもの、彼女は部活が終わるやいなや、「ごめん、クロ。私用事あるから先に帰るね。」と言ってそそくさと先に帰ってしまうようになったのだ。
別に俺への態度が冷たくなったわけじゃないし、機嫌が悪そうなそぶりもない。週末は今でも普通にデートしてるし。おかしいのは本当にそこだけだった。
たまに確認するように、「俺のこと好き?」と聞けば、「大好きだよ!」といつもの笑顔でそう答えてくれる。
本当だったら、どんな用事があるのか聞けばいいのは分かってるが、どうしてか聞けない自分がいた。
彼女を好きだし
彼女を信じてる。
あえて聞かない事が、そんな彼女への想いの強さの証明のように思った。
(まぁ、実際はカッコつけたかっただけなんかもしれないけど。)
「クロってそういうとこ、面倒臭いよね。」
両手で持ったゲーム機に視線を落としたまま、歩きながら研磨が片手間でそう言った。
「わかってますー。」
「別に聞いたら大した事じゃないかもしれないじゃん。落ち込むだけ時間の無駄じゃない?」
「たぶん大した事だと思う。」
「クロの他にそーゆう関係の人がいるとか?」
「あのね、もっと優しくしてくれる?」
「だからハッキリさせればいいのに。」
研磨は眉間にしわを寄せ、いよいよ本気で俺を面倒くさがっている様子で、ため息をついた。