第23章 明燐【黒尾】そして陽炎は夢から覚める。[R18]
香水を付けてるわけでもない、柔軟剤のソレともまた違う。
それなのにとても甘い匂いがする。
この匂いはなんだろう…?
そう思って口を開こうとすると先な黒尾くんの言葉が耳に届いた。
「なぁ…、何か付けてる?」
「……え?」
「お前からさ、すげー甘い匂いがする」
「…………っ、」
驚いて言葉が出ないよ。
まさか、黒尾くんも同じ様に思っていたなんて。
「…つけてない、あの、黒尾くんこそ…甘い匂い……してるよ…?」
言葉にするのがとてもとても恥ずかしくて、私は俯いたまま小さくそう告げた。
「……………」
「……………ごめん、私っ…もう帰…っ」
「帰さねぇよ」
「………っ!」
沈黙が耐えられなくて、ドアノブに手を掛けようとした私の手を黒尾くんの手が遮る。
驚いて顔を上げれば、
「………!」
またあの黒い瞳に捕らわれてしまった。
「あっ……」
大きくて長い彼の右腕が私の腰を抱き寄せる。
どうしよう、どうしよう…!
どんどん熱が顔に集まるのがわかる。
「閉めきると、あちーな……でもさっきより、」
左手は私の右頬に添えられた。
黒尾くんの手も、熱い。
「匂い、濃くてクラクラする」
「………っ!……んん…っ」
彼の熱い吐息が唇にかかったと思った次の瞬間、重ねられた唇。
拒めない、拒みたくないと思ってしまった。
こんな私は、はしたないだろうか。
「黒尾、くん……」
「なぁ、…匂いで惹かれ合うヤツらって相性バッチリなんだって知ってっか?」
「相性……?」
「そう。で、俺はそれをこれから実証したいと思ってる」
「じっ……ひゃあん…っ!」
片口を上げた黒尾くんは腰に回していた手を背中へと滑らせる。
「イイ声だな」
これはきっと夏のせい。
密室と化した部室は甘ったるい香りが充満している。
求め合うようなキスを繰り返し、徐々に乱れていく衣服。
恥ずかしさよりも、もっともっと彼に触れたいと言う気持ちが強くなる。