第17章 【嶋田】真夏の夜に酔いしれて_ss★
「じゃあ一緒に見るか。」
そう言うと嶋田さんは私の身体を反転させ、窓の方を向かせ今度は後ろから抱き締めてくれた。
古びたちゃぶ台に置かれたビールの缶を嶋田さんが持ち上げると、水滴が輪を書いて花火のスターマインに照らされチカチカと色とりどりに輝いていた。
ゴクッ ゴクッ 、 、 、
彼の胡座の中に座る私のすぐ耳元で、ビールを飲み込んでいく喉音が聴こえて自然に身体が熱くなる。
花火の音がうるさいし、きっと私の鼓動なんて嶋田さんには聞こえないけど。胸を突き上げるように激しく高鳴る鼓動が苦しくて、私はTシャツの胸元をギュッと掴んだ。
「こんなちゃんと見たの久しぶりかも。」
「え?」
「花火ね。」
「あぁ、、、いつもはお店番ですか?」
「そうそう。ちゃんは?毎年友達と行ったりしてるの?」
「んー、、、行ったり行かなかったり、ですかね。」
「あー。ちゃんてそう言う感じだよね。なんか冷めてるって言うかさ。」
「ひどい。」
「いや、悪口じゃなくてさ。落ち着いてるし、そこらへんの高校生と違って大人びてるから。同級生といてもつまらないでしょ?じゃなきゃ俺みたいなおじさん選ばないもんなー。」
「別にそんな事は、、、」
確かに私は、同級生が楽しそうに群れあって、やれ海だ、やれお祭りだと言っている輪の中に入りたいと思ったことはなかった。
大勢で群れ会うだけで安心しているような、そんなのは嫌いで、、、。私は、大切な人と大好きな場所にいられたら、それで十分じゃないかなと思うから。