第17章 【嶋田】真夏の夜に酔いしれて_ss★
アルコールを漂わせた彼の大人の色気に
飲まれないよう。
それだけで私は精一杯なんだ。
だって覚えていたい。
彼の唇の柔らかさ
私を撫でる手の強さ
いつも吸ってるタバコの匂い
浴衣を着た思い出も
友達と見る花火も
全部なくてもいい。
この記憶だけあれば、
今年の夏の思い出は十分だから。
嶋田マートで働くようになって、嶋田さんを好きになるまではあっという間だった。
面接の時の優しそうで穏やかなお兄さんってイメージは確かに今でも変わらない。でも、それに加えて彼の大人な一面に私はどんどん引き込まれていった。
休憩の時に、店の裏口から外に出て軒先でタバコを吸っている姿。
一見細身なのに、納品された重たい段ボールを軽々と持ち上げて、パートのおばちゃん達に絶賛されるその逞しい腕。
それに、時折見せる疲れた表情。
そのあまりにありふれた一つ一つが、
高校生の私には全部特別だった。