第17章 【嶋田】真夏の夜に酔いしれて_ss★
打ち上げ花火の音に合わせて
暗くした部屋は時折赤や緑や金色に
ぼんやりと照らされた。
遠くで聞こえる歓声
窓際で微かに揺れる風鈴の音
花火に驚く近所の犬の鳴き声
でも、私の耳を刺激するそのどれもが
今はどうでもいい。
唇が触れた瞬間、
芳ばしい麦芽の香りが
ふわりと鼻を抜けた。
嶋田さんの優しい手が私の後頭部をやわやわと撫で、くっついたり離れたり、焦らすような触れるだけのキスに、私の胸の中はギュウギュウと切ない音を立て締め付けられていく。
一緒に嶋田さんの部屋から花火を見る予定だったけど、私の視線は窓を背にして彼の肩越しに部屋の扉を向いていた。
「花火、見ないでいいの?」
「今は嶋田さんに集中したいです、、、」
少し意地悪く微笑みながら
そう問いかける彼に
私はあっさりとした返事を返す。
(私を抱き寄せてきたのは
嶋田さんじゃないですか、、、)