第12章 山の国 Ⅳ
「ここがフォウのいる要塞か」
要塞神殿の正面から入ることが出来ず、人目のつかない神殿の裏からの侵入に成功したゼロ達は、兵や大砲の位置を確認しながら、フォウを探していた。
「ちっ、フォウはどこだよ。さっさと出てこいっ!」
兵はいるが、肝心のフォウの姿は見当たらない。
堪らずゼロが叫ぶと、要塞中にけたたましい警報が鳴り響く。
「ゼロ、君が大声で叫んだからじゃ……」
「うるさいっ」
警報をうけ、警戒体制となった要塞内は次々と兵士たちが侵入者の姿を探す。
「侵入者だ!絶対に逃がすなっ!」
「警戒体制をとれっ!俺たちでフォウ様をお守りしなくてはっ!」
血気盛んな山の国兵達は、フォウの為に剣を取り、彼女のためなら命すら厭わない覚悟だ。
刀や銃を手に、次々とゼロ達の前に立ちはだかる。
「ゼロとその刀剣男士達を倒して、フォウ様に勝利をっ!」
「勝利を!とか寝言言ってんじゃねーよ!」
「フォウはゼロと違って、人望があるみたいだね」
「……ゼロにも、良いところはある、一応」
山姥切はゼロのフォローをしようと慌てて口を挟む。
だが、考えなしに口を挟んでも、歌仙相手では丸め込まれるのがオチだ。
「言うね、山姥切。例えば?」
「たとえば……強くて、豪快で……」
「それ、良いところなのかい?」
「…………」
他にも、あるにはある。
だが、恥ずかしくて口に出せない。
山姥切は反論の余地なく、黙り込む。
「聞こえているぞっ!あとで酷い目に合わせてやるから、覚悟しとけ!」
「…………だって、山姥切も大変だね」
他人事のように言う歌仙に、山姥切は目を見張った。
酷い目にあわされるのは、歌仙も一緒なのではないか。
むしろ歌仙の方が、何倍も失言が多いと思ったが、山姥切は敢えて何も言わないことにした。