第11章 山の国 Ⅲ※※
フォウの力によって要塞へ遠回りすることになったゼロ達は、雪山へと足を踏み入れていた。
日中だというのに日も差さず、雪が降り続く。
雪景色の中、ゼロ達は雪山にかかる、一本の吊り橋を歩いていた。
「おーい野良猫!」
山姥切が姿を消してから二日。
ゼロは時折大声で山姥切を呼ぶ。
呼ぶには呼ぶが、そこでもゼロは山姥切の名を口にしようとはしない。
「おおおおおーいっ!!」
ありったけの大声に苛立ちを乗せて、ゼロが叫ぶ。
「のーらーねーこぉぉぉぉぉぉぉ!!」
この二日、歌仙はこれまでそれを黙って見ていたが、今はそうもいかない。
「あの……」
「なに?」
今、ここで大声を出すのは得策ではない。
「そんなに大声を出すと、危ないと思うよ」
「敵に見つかるのが怖いのか?」
ゼロは歌仙を小馬鹿にしたような視線を向ける。
「之定っていうわりには、案外小心モノだな?あ?」
「いや、そうじゃな……」
「なっ!?」
ドドドという轟音と共に、ゼロ達がいた橋に雪がなだれ込み、ゼロ達ごと覆い流す。
雪崩という自然の力になす術もなく、ゼロ達は雪深く埋もれていった。
裏切りの女神
END