第10章 山の国 II※※
「この先の神殿にフォウがいるんだな」
「神殿を要塞化するなんて、トリみたいにキモの小さな審神者だね」
ようやく神殿に辿り着く。
そう思った矢先に、辺りに獣の咆哮が鳴り響く。
地を揺らすほどの轟音と共に、ゼロ達の前に現れたのは、魔獣。
左右の首をゼロ達に斬り落とされた、ケルベロスだった。
「うわっ!また出た!!」
「しつこいクソだな!なんなんだこのクソ犬!」
「どれだけ生き足掻いているんだ……醜い」
ケルベロスは神殿への道を塞ぐように立ちはだかり、ゼロ達に向けて吠える。
「ゼロ、構えて!一緒にケルベルスを倒そう!!」
「ケルベロス!言えてないぞ」
「ケレベロ……あれ?ケロベロ……」
「清光、頼むから真面目にやってくれ」
ゼロは呆れながら刀の柄に手をかける。
刀をすらりと抜き、ケルベロスとの間合いを詰める。
「醜悪な生き物がっ!せめて雅に散れっ!!」
歌仙はケルベロスの前足を斬りつけ、ゼロはすかさずその足元に入り込む。
「死ね、クソ犬が」
ゼロが下から掬い上げるように、ケルベロスに斬りかかる。
三つのうち、最後に残った首が地に落ち、ケルベロスの体は倒れた。
「ふん、大したことないな」
ゼロはケルベロスに背を向けると、血振りをし、刀を鞘に納めた。
「ゼロっ!!」
「ん?」
頭を全て斬り落とされ、絶命したと思っていたケルベロスは残った右足を振り上げる。
ケルベロスの側にいたゼロが振り返ると、鋭い爪が目前に迫っていた。