第9章 山の国 I
ケルベロスがいなくなり、ゼロと歌仙は揃って血振りすると、刀を納めた。
歌仙はゼロへ一歩近寄る。
「ゼロ、この戦いが段落したら、僕を抱いてもいいよ。ゼロは彼女と違って華奢だし、違った楽しみがありそうだ」
「気が向いたらな」
ゼロはあっさりと言った。
そのやり取りを見ていた山姥切は視線を逸らし、興味の無いフリをする。
だが、内心は穏やかではいられなかった。
ゼロ達は再び山道を進み、目的地を目指す。
だが、神殿の明確な場所が分からないので、山姥切の勘で進むだけだった。
「フォウってどんなヤツなんだ?」
「……処女だ」
「え……説明それだけ?」
相変わらず、ゼロは大雑把だ。
ひたすら歩くだけの今、時間はたくさんある筈なのに、それを説明する時間に充てる気は無いらしい。
「処女の審神者ってだけで、大体わかるだろ?」
「まぁね、面倒臭そうな女だってことは、ひしひしと」
「しょじょ?しょじょって何だ?」
「……後にしろ、山姥切」
また、山姥切は会話から閉め出される。
「処女の審神者に仕える刀剣男士って、どんなヤツなんだろうか?」
「まず間違いなく、変態だ」
「なるほど」
ゼロはおかしげに笑う。
しょじょが何のことかわからない山姥切は、何故、しょじょに仕える男士が変態なのか、理解出来なかった。
話についていけない山姥切に、歌仙はふっと笑みを浮かべる。
そして、少しだけ気になっていたことを山姥切に聞く。
「山姥切はゼロと寝たりするのかい?」
「っ!?お、俺は……寝ない。俺はいつも、離れて寝てる」
手入れをしないどころか、共寝すらない。
歌仙はさらにゼロと山姥切の関係が不可解に感じた。
「へぇ……じゃあ君がゼロと共寝しないというのなら、今夜も離れて寝てくれるかい?僕がゼロのお相手だ」
「…………わかった」
あからさまに落胆する山姥切の様子に歌仙はやはり、と思った。
面白いことに気付いてしまったと、歌仙は嬉しくて堪らなくなる。
歌仙は腕を組んで、これからどうしたものかと思案し始めた。
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