第7章 海の国※
戦いで深い傷を負ったゼロは、ひたすら眠り続けていた。
そこで、彼女は夢を見る。
戦いのない世界、戦わなくて済む世界。
だが、彼女の手から次々に大切なものが失われていく世界。
「やめろ……、やめるんだ……」
「私を……私を置いていくなっ!清光っ!!」
「っ!?ここ、は……っ」
ゼロが目覚めるとそこは見慣れぬ部屋だった。
体を起こそうとすると激痛が走り、それでも彼女は必死に起きようとする。
「き、清光……」
大切なものを探すように、手を伸ばす。
すると部屋の扉が開き、男が入ってくるが、ゼロは逆光のせいか相手の顔がよく見えずに目を細めた。
「起きたのか!?おい、まだ動ける状態じゃっ」
ゼロは体を起こし、ベッドから出ようとしたが、痛みのせいで体が上手く動かせず、床へと倒れこんだ。
「お前、は……清光は、どこに」
痛みに顔を歪ませ、無理矢理体を起こそうとするゼロに、山姥切は慌てて駆け寄る。
「…………加州なら、隣の部屋だ……」
「そう、か、良かっ……た」
ゼロは安堵の表情を浮かべると、ふっとまた意識を失った。
山姥切は、床の上で再び眠りについたゼロの顔を見つめる。
「お前も、アイツも……何故そこまで戦う必要がある」
審神者がこの世界に降り立ち、戦う必要のない世界になったというのに。
山姥切はゼロを抱き上げると、ベッドへと横たわらせた。
「俺には、わからない」
山姥切の懐にある紋付鈴がまた、チリンと鳴る。
運命の歯車が動く、その刻を告げるように何度も、何度も。