第14章 飛空艇 Ⅰ※※
フォウが乗っていた飛空艇を手に入れたゼロ達は、各々が部屋を選び、束の間の休息をとっていた。
そんな中、主であるフォウを失った一期一振は、以前から使っていた部屋で今後について考えていた。
「私は何故、まだ生きているのでしょう……ね」
一期一振はそう呟くと、目の前に置いた指輪を見据える。
ゼロの刀剣男士となるか、ゼロを拒み、命を絶つか。
どちらを選ぶか、一期一振は悩んでいた。
だがその時、部屋の扉が勢いよく開く。
「なんだ、まだ体を清めていなかったのか」
そう言うゼロの方は、すっかり身を清めており、先程まで返り血で染まっていたのが嘘のようだった。
「さっさと身を清めろ。私はあまり気が長い方じゃない」
ゼロはポンっとふかふかのベッドの上に乗ると、横になった。
「ほら、さっさとしろ」
素っ気なく言い、一期一振を急かすように手を払うと、彼は何も言わずに浴室へと向かう。
「………っ!?」
浴室に入った一期一振は、鏡に映った己の姿に目を見張った。
「フォウ……様」
目に飛び込んできたのは、真っ赤な、人の血。
これは、返り血だ。
一期一振の顔や衣服には、フォウの血がついていた。
頰に触れると、指先に血がうつり、彼はそれをじっと見つめる。
恐る恐る、指先で唇をなぞり、指先を口に含む。
舌先に鉄の味がした。
「あぁ……フォウ様っ」
声を震わせながら、一期一振はその場にしゃがみこむ。
主を亡くした故の悲哀か、それとも。
主の血を舐める。
その背徳的な行為が、一期一振の心を震わせたのか。
一期一振は、しばらくそこから動くことが出来なかった。