第10章 死神さん
「どこ行っちゃったんだろう…。」
せっかくアンダーテイカーがくれた物なのに。私の記憶探しにも、きっと必要なものだった。
「…」
下を向いて歩いていると、誰かにぶつかってしまった。
「!…す、すみませ……!?」
そこに立っていたのは、メガネをかけた男性。クロードだった。
「!…おや?」
目を見開き、私を見つめた。
「っぁ…し、失礼します…。」
悪いが彼には良い思い出がない。
「お待ちください。」
「!…」
腕を掴まれた。
「は、離してください…。」
「旦那様が、あなたにもう一度お会いしたいと言っておりました。」
「っ…。」(旦那様って…アロイスのこと…?)
「それに、私もあなたにお話したいことが」
「ま、またの機会に。」
私は微笑んで歩き出した。幸い、腕を強く掴まれていなかった。
「…はぁ…。」
「では、どこかでお茶などいかがですか?」
「わっ…!」
いつの間に…目の前に……。
「す、すみませんが…用事がありますので…。」
「それは急ぎの用事でしょうか。」
「っ…。」
このままだと、この人は諦めてくれなさそうだ。私は近くで匿ってくれる人を脳内で考えた。そして思いついたのがいまさっき出てきた葬儀屋だった。
私は早歩きでそこまで歩いた。そしてドアを開けた。
「おや?忘れ物かい?……お客さんかい?」
「こ、この人に用があるので。」(人じゃないけど…。)
私はクロードにそう言った。