第10章 死神さん
私は少し、彼から離れないといけないのだろうか。
「…とにかく、私は使用人として働くから、家族として接してくれるのは嬉しいけど、えっと……その…仕事に支障が出ないようにお願いしますね!」
「あっ、おい…!」
私はそう言うと、シエルの返事も待たずに部屋を出た。
「…あれ…ない…。」
エメラルドのネックレス…。どこかへ落としてしまったらしい。過去を話してくれたあと、袋の中に入れ、大事に持っていたのだ。
「…もしかして…。」
私はもう一度、葬儀屋に向かった。
「アンダーテイカー、ここにエメラルドのネックレス…」
「ナツキ?」
「っぅ…。」
何かわからないけど、とても匂いがきついものだった。
「アンダーテイカー?何…それ…?」
「あぁ、人の魂さ。」
「魂…?」
鼻をおさえても匂いはちっともマシにならない。
「人間の君には、匂いがちょいとキツかったかねぇ…。」
そう言い、瓶の蓋を閉めた。すると、何事もなかったかのように匂いは消えた。
「それで?用件はなんだっけぇ?」
「あ…エメラルドのネックレス…忘れていかなかったっけ?」
「ネックレス?さぁ?見なかったけどねぇ…。」
「んー、どこで落としたんだろう…。ごめんね、また来る。」
「ん、気をつけてねぇ。」
私は葬儀屋を出た。
「やっぱりこれは、渡せないよ…。このネックレスは…君の記憶に大きく関わることになっちゃうからねぇ…ヒヒヒッ!!さあ、続き続き♪」
アンダーテイカーはネックレスを大事に大事に戸棚の奥へ閉まった。