第9章 ご褒美は?
「この首元にあるのはなんですか?」
「……あ!」
「思い当たることがあるようで?」
「お、怒ってるんですか…?」
私の脚と脚の間に、セバスチャンの右膝が挟まれていた。
「…怒っている、と言ったら、どうしますか?」
「…こ、困ります…。」
「フフッ…怒ってはいません…。ですが、イラついてはいます。」
「お、怒ってるじゃないですか…。」
すると、セバスチャンの両手が私の首を掴んだ。
「…」
「…今ここで、私に殺されるとしたら…あなたはどうするのでしょうね。」
楽しんでいるのか、ニヤニヤしている。
セバスチャンの髪の毛が今にでも私の顔に付きそうだった。
「…綺麗な目…。」
私は腕をのばし、セバスチャンの頬に触れた。親指で涙袋をおさえて…。
「!…」
「…真っ赤な目…。」
悪魔の目だった。
「フフッ……あなたには…敵いませんね…。」
「私も、あなたには敵いません。」
「それはそれは…光栄です。」
少しだけ手に力を入れたセバスチャン。
「私の手で、あなたを殺せたら、どれだけ良いことでしょう…。」
「殺せば…良いんじゃないですか?」
「それはできません。坊ちゃんに叱られてしまいますから。」
私は…この時…もう確信したんだ。
私はこの人が「好き」なのだと。