第9章 ご褒美は?
「…」
「…ナツキ…。」
「何?」
私はベッドの近くに椅子を寄せ、シエルの手を握っていた。
「…あの日、ヘンリー家を殺しておけば良かったと思った。」
「…」
「あの時、僕はまだ何も知らなかった。ただ、ずっとこの日常が続けば良いと思った。僕よりも年上なお前を、本当の姉のように慕っていた。」
「うん。」
「僕は、復讐のためにアイツと契約を交わした。アイツにナツキのことも探してもらおうとした。でも何も手がかりは見つからなかった。だからあの日、お前をパーティー会場で見つけたとき、目を奪われた。」
話していて眠たくなったのか、まぶたが閉じかけていた。
「あの日…お前を見つけられて良かった…。もう…どこへも…行かないでくれ…。」
そう言うと、寝てしまった。握っていた手にも力が入らなくなった。
「……はい。いつまでも、お側におります。」
私は両手でその手を握り、離した。
そしてセバスチャンのところへ向かった。セバスチャンは部屋にいた。
「ご用でしょうか?」
「やっとですか。」
セバスチャンはネクタイを外し、フォーマル手袋も外していた。
「ご用件は…なんでしょうか?」
すると、ニヤリと笑みを浮かべ、私に近づいてきた。
「え…っと…。」
後ずさりをしてしまった。
「!…」(あ…。)
背後はいつの間にかドア。
「お礼、していただきたいと思いまして。」
「あ…。」(忘れてた…。)
私の首元のボタンを外した。
「!…」
「…?」
セバスチャンの目が見開いた。
「…これは?」
「え…?っあ…!」
セバスチャンに腕を掴まれたかと思ったら、視界が変わった。いつの間にかベッドの上にいた。