第9章 ご褒美は?
私は、シエルを抱きしめた。
「ゴメンね…シエル…。」
「!…お姉…様…っ…。」
「坊ちゃん…!」
セバスチャンが屋敷の中から現れた。
「ゴメンね…ゴメンね…。」
こんな大事な人を忘れてしまっていたなんて…思いたくなかった。
シエルはしばらく私に抱きしめられていた。私が離そうとしても離してくれなかった。
「シエル…そろそろ…。風邪ひくよ?」
帰ってきた時からずっと玄関の前で抱きしめたまま。
「…あぁ…。」
やっと離れてくれた。
「坊ちゃん、もうお休みのお時間でございます。」
「あぁ…。」
何を話しても上の空だった。もう朝になるというのに……。そう思ったけど、シエルは寝ていないのか、うっすら、目の下にクマができていた。
シエルは私の手を握り、自分の部屋まで行った。セバスチャンに着替えさせてもらう時も、私の手を離さなかった。
「ぼ、坊ちゃん、もうどこへも行きませんから。」
「…わかってる…。」
そう言ったあとも、強く手を握った。
セバスチャンは私の方をチラッ…と見ると、またシエルの着替えに視線を戻した。
あくびを漏らしたシエル。
「おやすみなさい、坊ちゃん。」
「行くな。」
「!…」
「…ここにいろ…。」
「ですが…」
「頼むから。」
「……かしこまりました。」
セバスチャンが部屋から出ていくとき、私に目で合図をした。私は頷いた。
時間があいたら、セバスチャンのところへ行く。