第8章 過去
*(現在)*
「だからだと思うよ。」
「!…」
初めて聞かされることばかりで、驚きばかりだった。
「伯爵は君を屋敷に迎え入れた。血は繋がっていないけど、伯爵にとって君は、とても大切な存在。小生は伯爵に全てを話した。記憶はないけど、君の姉だと。」
「私が…シエルの…姉…?」
「そう。だから伯爵は、君に向けて、パーティーの招待状を出した。でも、ソフィアがそれを取ってしまった。執事君も、君の魂が欲しくて、君に近づいたんだと思うよ?」
全て知ることができた過去。アンダーテイカーが私を蘇らせてくれた。
「…でも…エメラルドのネックレスは…どこ…?」
「もちろん、小生が持っているよ。」
そう言い、掌を広げると、エメラルドのネックレスがあった。
「!…」
「ゴメンねぇ…小生が救ってあげられれば良かったんだけど…それができなかったんだよ…。辛かっただろう…?」
アンダーテイカーは私の頭を撫でてくれた。その瞬間、私は涙がこぼれ落ちた。
「っ…うあぁっ…。」
止まらない。アンダーテイカーが私のことをこんなにも大切に思ってくれていたのに、私は何も覚えていなかった。いくら辛い記憶を消してくれたからと言って、彼のことまで忘れたくはなかった。
しばらく止まることを知らなかった涙。
アンダーテイカーはずっとそばにいてくれた。背中をさすってくれたり、頭を撫でてくれたりした。
それから……。
「も…へーき…。」
「そう?」
「ん…。」
目が真っ赤に腫れていた。
「…アンダーテイカー…。」
「どうしたんだい?」
「…ごめんなさい…。」
「何がだい?」
「…私のために話さないでいてくれたのに…知ろうとしちゃって…。」