第8章 過去
それから……何年か経ったある日。
「ここで写真を撮ろうか。」
「え…?」
「ほら、シエルも並んで。」
「う、うん。お姉様、僕の隣に来てください。」
「私も…?」
「もちろん。」
「じゃあ、撮るわよ。」
レイチェルがシャッターを押してくれた。私はエメラルドの付いたネックレスを着けたまま、写真を撮った。
「うん、また増えてきたわ!」
「アルバムかい?」
「そう!」
分厚いアルバム。
「なんですか?それ。」
「これ?これは、アルバムよ。写真を撮っておくの。これだけは何があっても失いたくないわ。だから、炎にも強いのよ。」
「!…そうなのかい?」
ヴィンセントも知らなかったのか、驚いていた。
「ええ。だからこのお屋敷が燃えても大丈夫よ。」
「なんてことを言うんだい、君は。」
「ふふっ!ゴメンなさい。」
でも、これが本当に起こってしまうだなんて誰も思っていなかった。
誰かがファントム邸に火をつけた。
「!…ヴィンセント!レイチェル!シエル!」
もう嫌だった。2度も同じようなことが起こるだなんて。
「っ…。」(神様は…意地悪だ…。)
「お、お姉様…っ…!」
「!…し、シエル…!」
シエルが誰かに連れて行かれてしまった。私は必死に逃げた。いつか、シエルを助ける。と心の中に誓って。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
「!…アイツは…。」
「そうだ!間違いねぇ!」
「わっ!離して!!」
「大人しくしろ!ナツキ・エミル。」
「!…」
それは、ヘンリー家の人達だった。