第6章 嫌な予感
私は身長が高い燕尾服を着た人にぶつかってしまった。
「申し訳ありませんでした。」
メガネをかけ直し、彼は私に手を差しのべてくれた。
「あ……いえ…私こそ…ボーッとしていたものですから…。」
私はその手をとり、立ち上がった。金髪碧眼の美少年と黒髪のメガネをかけた人がいた。
「…」
私を見つめるその黒髪の彼。
「え…っと…それでは…失礼します…。すみませんでした…。」
私はその2人の横を通りすぎた。
「ほら、早く僕達も行こう?シエル・ファントムハイヴに会いに行かなきゃ。」
「!…」(坊ちゃんに…?)
そう思い、振り向いた。
「…ん?何?」
「あ…っ…い、いえ…なんでも…ありません…。」
私は小走りで歩き出した。お屋敷にはすぐに着いた。
「ただいま戻りました。」
「ああ。」
先に自室に行き、メイド服に着替えたあと、書斎にいたシエルに話しかけた。
「ナツキ、お前はもう自室に戻れ。客が来る。」
「お客様…ですか…?」
「あぁ……アロイス・トランシー。」
「アロイス……トランシー?」
「僕と同じ、執事を連れている奴だ。」
頬杖をついたまま、私に説明をしてくれた。机の上には本があった。その本のページをペラペラとめくっている。
「…あ、あの…その方は…金髪のお方でしょうか?」
「ああ。知っているのか?」
「!…帰り道に…ぶつかってしまって…。」
「怪我はなかったか?」
「は、はい。」
「…そうか、なら良かった。」