第6章 嫌な予感
アンダーテイカーは喋りたくなさそうだった。
「大丈夫だよ、そんなこと…しないから。」
「ホントに~?」
「ホント。」
「…じゃあ…少しだけだよ~?」
「やだ。全部知りたいの。」
「それは勘弁してよ~。君にはまだ早いよ。」
「私の過去なのに、どうして早いとか言うの!早くない、ていうか関係ないから!」
私はカウンターを両手で叩いた。
「ん~、でもなぁ~。」
「……はぁ…わかった…。少しだけでいいから教えて。」
「うん。まずは何を教えてほしいんだい?」
「…シエルのアルバムを見たんだけど、ヴィンセント・ファントムハイヴって知ってる?」
「もちろん。」
「…その人を見たとき、頭がもの凄く痛くなったの。知ってる気がするのに、私の記憶をどれだけさかのぼってもその人のことを覚えてないの。」
私がそう言うと、アンダーテイカーは考える素振りを見せた。
「それは、伯爵に聞いたのかい?」
「…答えてくれなさそうだったから…聞いてない…。」
「ふぅん……。小生が答えられる範囲だと、君はその人に会ってるよねぇ~。」
「!…」(やっぱり…。)
私は目を見開いた。でも、疑問が浮かんだ。
「…その人は今どこにいるの?」
「死んだよ。」
「!…え…。」
「誰かに惨殺されたんだよ。だから伯爵のいるお屋敷は1度燃えたんだ。全焼してね。」
驚くばかり。知らないことばかりなのだから。
「…じゃあ…どうして…あの写真だけ残っていたの…?」
「ナツキ、君が見たアルバムの表紙に、英語でsoulと書かれていなかったかい?」
そう聞かれ、私はアルバムを見たときのことを思い出した。