第5章 風邪
咳は出てしまう。
「…フフッ…。」
「スー…スー…。」(え、何?何するつもり…?)
すると、セバスチャンは私の前髪をあげ、額にキスを落とした。
「寝たフリをするだなんて、何をそんなに期待しているのですか?」
「っ…ごほっ…!ごほっ…!」(バレてたー!!)
「このようなことですか?」
「!…やっ、やめてください!」
服の中に手を入れられ、思わず声をあげてしまった。
「やはり、起きていましたか。」
「し、知ってたんじゃないんですか…?」
「いえ、もしや、と思い、試させていただいただけでございます。」
「っ…!」
最悪だ。
「…セバスチャン…。」
「はい?」
「…水…が、飲みたい…。」
「かしこまりました。」
怒る気力すら起きなかった。喉が乾き、水を頼んだ。セバスチャンはすぐに持ってきてくれた。
「どうぞ。」
「あり…がと…。」
起き上がり、水を受け取った。それを喉に流し込んだ。喉が痛い。
「…セバスチャン…。」
「はい。」
「私のことは…もういいから、シエルを見てあげて…?」
「いえ、それはできません。」
「え…?」
聞くと、シエルが仕事をしている間に私のところに来ているらしい。ということは、今日はシエルの仕事は多い。普段よりも多いということになる。
「…仕事、見てあげなくていいの…?」
「ええ。ナツキのことを最優先しろ。と言われましたから。」
ニコリと微笑んだ。