第5章 風邪
「ごほっ…!ごほっ…!」
さっきから咳が止まらない。すると、ドアをノックする音が聞こえた。
「失礼いたします。」
「っ…は、はい…。」
セバスチャンの声だった。
「りんごをすりおろしたものをお持ちいたしました。」
「…食べたく…ないです…。」
「ですが、食べなければ治りませんよ?」
「…ごほっ…ごほっ…!」
セバスチャンに背を向けた。
「…仕方ありませんね。」
持って帰ってくれるかと思った。でも、違った。
「少し、起き上がれますか?」
「…」
私は起き上がった。すると、セバスチャンはりんごを口に運んだ。
「…」(セバスチャンが食べるんだ…。)
そう思いながら、ボーッとみていると、いきなり唇が重なった。
「んっ…!」
休む暇なく、舌が入ってくる。
「っふぁっ…んんっ…。」
そして何かを飲み込んだ。ようやく離れた唇。
「っ…//////」(口移し…!)
「これなら、食べられそうですか?」
試すように微笑んだ。
「っ…//////出てってください!!」
その日、私の怒鳴り声が屋敷に響いた回数、5回。
「はぁ…はぁ…。」
怒鳴りすぎたせいか、また疲れ始めた。でも、朝より体調は良い。セバスチャンのおかげ。
「失礼いたします。」
「…」(わ~、また入ってきた…。今度は何の用?)
そう思い、寝たフリをした。
「おや…?」
「スー…スー…んっ…ごほっ…!ごほっ…!」